トップページへ

「ER」1st season 第2話 その2 + 4th 20話  「脾臓損傷」


脾臓損傷/『パトリオットゲーム』


1st season 第2話
■11分40秒―12分29秒
車にはねられヘリコプターで運ばれた女児です。
娘さんは脾臓の破裂 ruptured spleen で腹腔内出血をおこしていました。
手術室へ運ばれていきます。

■20分02秒―21分35秒
父親に奥さんが絶望的であること、臓器提供の意思があるかを話しています。
とてもつらい瞬間です。そこで娘さんの手術の説明もしています。
娘さんは脾臓の修復手術 repair がおこなわれています。

脾臓 spleen は腹腔内の左の横隔膜の下、胃の後ろにある臓器です。
免疫や血球破壊などの仕事をしています。
腹部外傷で損傷をうけると出血をきたします。
やわらかい臓器なので縫合することは簡単ではありません。
そこで昔は損傷した脾臓を摘出していました。

しかし、脾臓を摘出してしまうと、感染症を起こしやすくなることがわかってきました。脾臓摘出後重症感染症 overwhelming postsplenectomy infection(OPSI)と呼びます。肺炎球菌 Streptcoccus pneumoniae による感染がとくにおこりやすくなります。そうならないように摘出ではなく修復 repair しているのです。また最近は血管塞栓術で治療することも増えています。

外傷以外の原因で脾臓摘出術をおこなうこともあります。肺炎球菌に対するワクチン Vaccine がありますので、やむを得ず脾臓摘出をおこなった後は、肺炎球菌ワクチンを使います。(肺炎球菌ワクチンの適応に明記されています。)

4th season 20話
■30分20秒―31分05秒


Dr Benton が脾臓摘出術をおこなった子供の父親に説明しています。

Your son sustained irreparable damage to the blood vessels supplying the spleen. We had no choice but to perform a splenectomy. He's gone be prone to certain infections, so he will need to be vaccinated against …
「脾臓を養っている血管(脾動脈)に修復しがたい損傷がありました。脾臓を摘出するしかなかったのです。ある種の感染が起こりやすくなるので、ワクチンを受けましょう。」

と言っています。話の途中で父親がさえぎっているのでセリフが切れていますが、肺炎球菌に対するワクチンの話をしています。

この場面で Dr Benton は今後について話を始めますが、父親はまず手術が成功したのか、助かるのかどうか、を尋ねています。相手が何を知りたいのか、なにを知らないのか。つい自分がわかっていることと、相手がわかっていることが同じでないことを忘れてしまうことがあります。

ハリソンフォード主演の『パトリオットゲーム』(1992)で、主人公の娘がテロのせいで脾臓摘出術をうけます。その後テロリストから主人公に電話がかかってきます。その中でテロリストが、
“Losing her spleen will make it tough on her to fight off infection.”
といやがらせを言っています(68分)。こんな普通の映画に脾臓摘出後の感染の話が出てくるのには驚きました。

fight off infection:感染と闘う


「ER」目次へ


このページの上部へ