大動脈aortaの壁は3層になっています。この動脈壁が裂けて中膜に血液が入る状態を、大動脈解離(aortic dissection)と言います。解離が重症になると、壁が破れて大出血をおこす、あるいは大動脈起始部に解離がおよぶと心膜内に血液が出て心タンポナーデ(cardiac tamponade)や心筋梗塞(myocardial infarction)、大動脈弁閉鎖不全などをきたして致死的になります。
大動脈解離(aortic dissection)の分類には、De Bakey分類とStanford分類の2つがあります。
De Bakey分類
Ⅰ型:解離が上行大動脈から下行大動脈まで及ぶ。
Ⅱ型:解離が上行大動脈だけ
Ⅲ型:解離が下行大動脈だけ
Stanford分類
A型:解離が上行大動脈におよぶ。
B型:解離が上行大動脈におよばない。
図でわかるようにDe Bakey分類のⅠ・Ⅱ型がStanford分類A型に、
De Bakey分類のⅢ型がStanford分類B型に、相当します。
大動脈がふくらむ状態を大動脈瘤aortic aneurysmと呼びます。
解離が原因で膨らむと解離性大動脈瘤と呼びます。
1st season 第20話 その1
■9分22秒– 11分52秒
中年の男性が突然胸痛を訴えて倒れます。
early diastolic murmur 拡張早期の心雑音が聞かれるので、大動脈弁閉鎖不全を疑っています。突然の胸痛と考え合わせて、Lewis先生は大動脈解離を疑いました。
診断のためには胸部レントゲン・CT検査などを行います。超音波検査は心臓や腹部大動脈はよく見えますが、胸部大動脈は周囲に肺があって見えにくいのです。食道から超音波検査をおこなうと、胸部大動脈が見えます。
transesophageal echo:経食道超音波検査
食道esophagusを通してtrans-
画像で解離が出ていました。
しかし経食道超音波検査は、内視鏡と同様に挿入する必要があるので、CT検査のほうが一般的です。
He’s got a type A dissection of the aorta.
字幕にはtype Aと出ていませんが、音声ではtype Aと聞こえます。
Stanford分類A型なので、大動脈弁に影響したのです。
2nd season 第6話
■16分04秒– 17分00秒
aortic aneurysmを疑う患者さんです。
症状がよくなったので帰りたいと言っています。しかし、Lewis先生は油断できないことを良く知っていてCT検査をします。
■19分40秒–20分33秒
CTをみてDe Bakey分類Ⅲ型と言っています。字幕の綴りは間違っています。
太さがまだ少ないので緊急手術の必要はないでしょう。
De Bakey分類Ⅲ型であれば、上行大動脈はかからないので、心タンポナーデ(cardiac tamponade)や大動脈弁閉鎖不全aortic valve insufficiency はおこるはずがありません。ここのセリフはちょっとずれています。
3rd season 第3話
■28分55秒–29分18秒
回診でDr Carter がA型とB型の違いについて質問されました。
Type A involves the ascending aorta and type B the descending.
ascending aorta:上行大動脈、descending aorta:下行大動脈
正解です。Benton先生びっくりしてます。
これくらいは常識ですヨ。