トップページへ

「ER」2st season 第7話 その1  「外科的気道確保」

Dr Ross が通りがかった重症の子供を救います。『ER』全体の中でも George Clooney が最もカッコイイ場面です。

■23分55秒–24分38秒
左足(left lower extremity)をはさまれて動けないところへ水が増してきて、溺水(drowning)+低体温(Hypothermia)で心肺停止になってしまいます。子供を水から出して心肺蘇生をおこないます。

このドラマがつくられた当時(1995)の心肺蘇生法(CPR)は、呼吸と脈の確認→人工呼吸2回→胸骨圧迫15回でした。このシーンscene では忠実におこなわれています。(小児は5:1でした。後のヘリ内のsceneでは5:1でやっています。)
現在は成人のCPRは、呼吸と脈の確認(Health Care Provider)→胸骨圧迫30回→人工呼吸2回です。しかし子供では呼吸停止による心停止ではさきに人工呼吸から始めるとされています。また胸骨圧迫と人工呼吸は、子供では一人法は30:2で二人法では15:2です。

■25分56秒–
警備員が助けにきました。Dr Ross は口対口人工呼吸 Mouth-to-mouth でうまく換気ができない、これは上気道:咽頭・喉頭・喉頭蓋あたりが閉塞しているためと考えて、それより下の気管を穿刺・切開して気道を確保しようと考えます。

確実な気道確保には、気管挿管することがほとんどですが、気管挿管できないことがあります。呼吸できないとあっという間に無酸素状態になり、脳は酸素がこないと数分で機能しなくなりますから一刻を争います。緊急に気道を確保するため、頚部を穿刺あるいは切開しなければなりません。このような場合を気道緊急、処置を外科的気道確保 surgical airway management といいます。

甲状軟骨(thyroid cartilage)と輪状軟骨(cricoid cartilage)の付近が皮膚に最も近いので、短時間に切開・穿刺することができます。輪状甲状靱帯(間膜)切開または穿刺(cricothyroidotomy)と言います。『ER』でも、たびたび出てくる処置です。

ちなみに気管切開術(tracheotomy)は、輪状軟骨よりも2,3本下の気管軟骨で切開します。甲状軟骨はいわゆるのど仏(Adam's Apple)ですね。

甲状腺(thyroid gland)は、甲状軟骨よりも輪状軟骨よりも2,3本下の気管軟骨の前あたりにあります。蝶ネクタイのような形をしています。

Dr Ross は穿刺した穴から充分に換気するために pen を借りています。とっさの idea です。もちろん、本来は消毒して滅菌の機材でおこないます。しかし、一刻を争うのでペンをメスがわりに切開しました。

上気道閉塞で緊急の切開・穿刺を要するのは、顔面外傷や急性喉頭蓋炎・アナフィラキシーショックなどでおこります。溺水と低体温だけで上気道閉塞は少し考えにくいように思いますが。

ほんらいは輪状甲状靱帯切開は12歳以下では、声門下狭窄をきたすのでやらないことになっています。しかし、やらなければ助からないのでやったのでしょう。

頚動脈の脈拍の触知は左右同時にはおこなわない方がよいとされています。(27分06秒)



「ER」目次へ


このページの上部へ