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「ER」3rd season 第16話 その1+ 第18話 その1「上腸間膜動脈血栓症」


上腸間膜動脈superior mesenteric artery(SMA)は
4mにもおよぶ小腸全体から横行結腸まで非常に広い範囲を養っている動脈です。
       superior:上の ⇔ inferior:下の
SMAが閉塞すると、この範囲の腸管が壊死に陥ります。
最初は腹膜炎の所見はなく、局在性のない腹痛のため診断が難しいのです。
しかも閉塞が強ければ、早期にショック状態となり、死亡率が高いです。
手術しても、壊死範囲が広いと残せる小腸が短くなり
short bowel syndrome「短腸症候群」となります。
消化吸収が非常に低下します。
残存腸管が30cm以下では、ずっと中心静脈栄養が必要と言われています。
superior_mesenteric_artery
3rd season 第16話

■16分27秒 – 17分40秒
Dr Carterが非常にobeseな女性を診察しています。
atrial fibrillation心房細動の既往があり、digoxinを服用しています。

腹部の診察で揺らすようにしているのは、腹膜刺激症状の
反跳痛rebound tendernessをみているのです。

breakfastの内容を確認しています。
腹痛の時は、食事の内容は重要です。
しかし卵3ケにベーコンにミルクに~と、高脂肪であきれています。

American Heart Association(略AHA):アメリカ心臓協会と訳されますが、
心血管疾患・脳血管疾患・心肺蘇生法などで最も権威ある学会。
高血圧などに対する食事療法の指針も出しています。
日本でも様々なAHAの基準や分類がstandardになります。

検査crit:hematocrit(Ht):血液中の血球成分の割合。
成人女性だと35~45であり、53は非常に高い。(字幕の35は誤り)
Htが増加するのは、血球成分が増えるか血漿成分が減るか。
血球成分が増える多血症を指摘されていないので、
脱水dehydrationが疑われます。だから
You drink enough fluids?  ちゃんと水分摂りましたか?
と質問しています。

腹痛なのに胸部レントゲン(chest filmと言っている)
しか撮影していないのは、おかしいですね。

外科医surgeonに相談しましょう。と

■19分47秒 – 21分16秒
bibasilar:左右の肺底部の
bi-は「二つの」「両側の」
  bilateral:両側の。⇔unilateral:片方の。一方の。
  bipolar:二極性の。⇔monopolar:単極性の。(電気メスなど)
basilar:底部の。 ←base:底。基礎。ベース。
  basilar artery:脳底動脈
    cerebralなどをつけなくても「脳底動脈」を指します。

CHF:congestive heart failure:うっ血性心不全

Anspaugh部長も診察で腹膜刺激症状がないことを確認しています。
心不全からの肝うっ血が腹痛の原因だと結論づけました。
しかし、Dr Carterは何か納得できません。

(後のセリフから、うっ血に対して利尿剤を投与したようです)

■25分04秒 – 25分35秒
痛みはどんどん強くなります。呼吸も早くなっています。
daughter娘さん「我慢強い母が痛いと言うのだからよほどのことよ」
こういう家族の情報はとても重要です。

今度はちょっと触っただけで痛がっています。
血液ガス検査ではacidosisが現れています。
代謝性アシドーシスを代償するために呼吸が早くなっているのでしょう。
大急ぎでDr Hicksを呼びます。

■28分37秒 – 30分20秒
bilaterally:前述

Dr Carterの考えは
ischemic small bowel disease secondary to an embolism in the mesenteric artery.
Dr Hicksも同意しています。
という訳で、緊急手術になりました。

■37分55秒 – 38分47秒
Anspaugh部長・Dr Hicksの指導のもとに手術が始まりました。


3rd season 第18話

■6分32秒 – 7分28秒
Dr Carterが中年男性を診察しています。
かなりheavy smokerのようです。
診察室で携帯電話mobile phoneはいけませんね。

Einstein wore brown socks for lack.
アインシュタインは靴下嫌いで有名だったそうですが…。

■10分50秒 – 11分20秒
腹部単純レントゲン撮影の所見を報告しています。
no acute bowel obstruction:腸閉塞はない
(日本語字幕「閉塞はない」だけなので、動脈閉塞があるのに?と
 思ってしまいます。ここでは腸管の閉塞がないと言っています。)

a history of peripheral vascular disease
末梢血管疾患の既往がある。

I would like to get an angiogram.
 血管造影をしよう。と
 第16話の経験が生きていますね。
 現在では、まず造影CTで診断するところです。

■14分15秒 – 15分12秒
血管造影室です。
Dr Carterがangiogramの説明をしています。
This artery brings blood into your small intestine.
It is completely blocked off.

■18分15秒 – 20分04秒
Anspaugh部長に報告しています。

His celiac is shot.
celiac artery:腹腔動脈:これは上腸間膜動脈とは別で、肝臓・脾臓などを養う。
ですから、このセリフは間違いです。

MI:miocardial infarction:心筋梗塞
table:手術台の意味です。
Anspaugh部長は、riskが高すぎると手術しない方針です。
   多くの病院で手術成績を競っています。
   死亡の危険が大きい重症な手術はしない方が成績が良く見えるのです。
しかし、手術あるいは血栓除去しなければ助かる見込みはありません。
患者さんに手術の必要性を説得したのに、前言を翻して非難されています。

■20分45秒 – 21分22秒
後ろに移っている動脈造影の写真は確かにSMA上腸間膜動脈の閉塞があります。

His collaterals may still be perfusing his bowel.
collateral:二次的な。傍系の。
ここでは側副血行路の意味。
側副血行路があれば、閉塞しても別の血管から血液が供給されます。
SMA上腸間膜動脈は側副血行路がないので、いったん閉塞すると急速に悪化するのです。
ですからDr Hicksは言下に否定したのです。

■24分28秒 – 25分50秒
Dr CarterとDr Hicksが手術しています。
腸管が壊死して悪臭を放つので、二人が顔をそむけています。

From the proximal jejunum to the transverse colon.
proximal:近位の。⇔distal:遠位の
空腸起始部から(回腸を含め)横行結腸まで。
つまり、SMA上腸間膜動脈の支配領域全部です。

■38分24秒 – 39分35秒
手術直後にもう抜管できているのは早いような気がしますが。

We removed most of your small intestine.
小腸をほとんど切除した。(ので短腸症候群になります。)

英語字幕では“salt food”「塩辛い食事」となっていますが、
日本語字幕と吹き替えは“solid food”「固い食事」です。
短腸症候群なので、消化の悪い食事はできなくなります。
Dr Carterのセリフは“solid food”だと思います。

それでも一命をとりとめたようです。
Dr Carterのおかげですね。

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