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「ER」2nd season 第19話 その1「モンテスマの復讐」


急性虫垂炎(acute appendicitis)は、一般には「盲腸」と呼ばれて
ごく簡単な病気で簡単な手術と思われています。
しかし、実際には定型的でない症例も多く、また鑑別すべき疾患も多く、
難しいものです。「外科医はアッペに始まりアッペに終わる」とまで
言われています。(3rd season 第14話 その1 参照)
今回はそんな急性虫垂炎にまつわるお話が二つです。

■2分50秒 – 3分10秒
アシスタントのジェニーがDr Bentonに指示を仰いでいます。
She had two days of vomiting, diarrhea and periumbilical pain.
二日間の嘔吐・下痢・臍周囲痛があります。
peri-:周囲の  perinatal:周産期の
        periaortic:大動脈周囲の
umbilical:臍の

It began after dinner in Mexico City.
She came here from the airport.

症状はメキシコシティでの夕食の後に始まった。
空港から病院へ来た。

No rebound or guarding.
反跳痛も筋性防御もない。
(この二つは腹膜刺激症状で、腹膜炎を示唆します)

Sounds like Montezuma’s Revenge.
Montezuma Ⅱ:モンテスマ2世。アステカ(メキシコ先住民の国)の皇帝。
1520年スペインから来たコステロによって滅ぼされました。
revenge:リベンジ
メキシコ旅行で罹患する嘔吐・下痢のことを
“Montezumaの復讐”と呼ぶのです。

Dr Bentonは忙しいため自分自身では診察しませんでした。
これは非常によくないことです。

■10分30秒 – 11分01秒
救急車で戻ってきました。
The pain is moved from mid-abdomen to the right lower quadrant.
最初は心窩部痛で後に右下腹部痛になるのが、急性虫垂炎の特徴です。
quadrant:3rd season 第21話 その2 参照

さっき診察しなかったことが悔やまれます。

■11分45秒 – 12分20秒
手術しています。
perforated:穿孔しています。
puss膿が出ています。
嫌気性感染の膿は悪臭があるので、術者二人がのけぞっています。

amp:ampicillinアンピシリン:ペニシリン系抗菌薬
gent:gentamicinゲンタマイシン:アミノグリコシド系抗菌薬
   (5th season 第2話 その26th season 第13話 その2 参照)
Flagyl:嫌気性菌に対する抗菌薬メトロニダゾールの商品名:

頻脈120とすでにsepsis敗血症に陥ってきています。

It’s a shame she didn’t get in sooner.
麻酔科医に言われて、Dr Bentonは”Damn”としか言えません。

■15分10秒 – 15分40秒
Dr Carterは次のpatientの報告をしています。
He had periumbilical pain that localized to right lower quadrant, rebound pain and guarding, nausea and vomiting.
臍周囲痛が右下腹部痛になり、いかにも急性虫垂炎のようです。

Dr Hicksはいきなり触診しているのは良くありません。
patientに一言断るべきです。
しかも痛みのある場所を最初に押すべきではありません。

急性虫垂炎ならもう少し下のはずだけど…。と言っていますが、手術になりました。

■15分40秒 – 16分20秒
Dr Bentonの患者はfibrillating細動を起こしてしまいました。
crash cart:救急カート 除細動器defibrillatorが載っています。

■17分10秒 – 18分10秒
Dr Hicksの指導のもとにDr Carter がappendectomy虫垂切除術に挑戦しています。

the internal oblique (muscle):内腹斜筋
交叉切開法で開腹する際に内腹斜筋を分けて腹膜に到達します。

healthy appendixしかし虫垂は正常です。

bellyache:腹痛
   belly:腹部
  -ache:痛  headache:頭痛、stomachache:胃痛、toothache:歯痛

toothpick:爪楊枝
爪楊枝の鋭利な先端で穿孔して腹膜炎症状をきたしていたのでしょう。
爪楊枝による小腸穿孔は非常に稀で、日本では十数例しか報告されていません。
CTなどおこなっても診断が難しいのです。
(このエピソードでは術前にCTを撮影していませんが)

terminal ileum:終末回腸、Bauhin弁の近くです。
terminal:終末の  terminal care:終末期医療
列車などの終点の意味でも使われます(ターミナル)。

Dr Carterが爪楊枝を摘出しています。

■18分10秒 – 19分00秒
一方、Dr Bentonは蘇生には成功したようですが、厳しい状況です。

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